コンストラクションマネジメントとは

コンストラクションマネジメントとは、建設の知識や技術を持たない発注者の代行者となり、プロジェクトを管理することで、建設プロジェクトを円滑に推進し成功に導くことです。また、各フェーズをマネジメントすることは、業務の効率化やコストダウン・品質改善にもつながります。

日本の建設業界でも浸透しつつあるコンストラクションマネジメントについて、わかりやすく解説していきます。

コンストラクションマネジメント(CM)とは

従来、設計、発注、施工に関連する各種のマネジメント業務を発注者側で実施していますが、発注者が建設の専門的な知識や技術がない場合、的確に判断できないことやプロジェクトの透明性が保てないなどの懸念材料があります。
コンストラクションマネジメント(CM)では、CMを提供する会社が発注者と「マネジメント業務契約」を締結し、発注者の補助者として必要なマネジメント業務の全部または一部を行います。

コンストラクション・マネジャー

発注者では判断が難しい専門的な内容への補助や代行などを行い、建設プロジェクトの各段階でのコストや品質・工程を管理することで円滑にプロジェクトを進め成功に導きます。マネジメント業務を推進する人は、コンストラクション・マネジャー(CMR)と呼ばれています。

コンストラクションマネジメントは、1960年代からアメリカで多く用いられている管理手法です。近年は、日本でもコンストラクションマネジメント(CM)方式の活用が進められています。CM方式は、従来は設計会社や総合建設会社などが業務として行っていましたが、近年ではCMを専門としているコンサルタント会社もあり第三者的立場でマネジメントを行っています。

ピュアCMとアットリスクCM

CM方式には、「ピュアCM」と「アットリスクCM」の2種類があります。

ピュアCM
コンストラクション・マネジャーが、設計・発注・施工の各段階で発注者側の立場に立って、マネジメントしていく方式です。この方式の場合、発注者はコンストラクション・マネジャーの提案を踏まえ、設計会社・施工会社と一括や分離などの契約を行います。日本で「CM方式」という場合は、ピュアCMを指す場合がほとんどでしょう。
アットリスクCM
コンストラクション・マネジャーがピュアCM業務に加え、施工に関するリスクも負う方式です。ピュアCMの場合、発注者が施工を担う会社と契約するため、施工に関するリスクは発注者が負います。そのリスク回避のために、発注者に変わってコンストラクション・マネジャーが施工会社と直接契約を結ぶ方式のことをアットリスクCMと言います。

アットリスクCMの場合は、発注者とコンストラクション・マネジャーがCM契約だけでなく工事契約も締結するのが特徴です。そのうえで、コンストラクション・マネジャーが工事契約の部分に関して、施工会社と工事契約を締結します。ただし、アットリスクCMの場合でも、建設業法上の建設業許可及び受発注金額についてCMRが負担可能なリスク及び最大保証金額設定等の問題からプロジェクトに関する最終的な判断や決定の責任は発注者が負うのが一般的です。

日本では、ピュアCMが主流ですが、欧米ではアットリスクCMが主流といえます。しかし、日本でも東日本大震災関連の復興事業でアットリスクCMの導入事例があります。

プロジェクトマネジメントとの違い

プロジェクトマネジメント(PM)とは、プロジェクトのすべての工程で包括的にマネジメントすることです。発注者のために可能な限り効率的な方法で、プロジェクトを成功に導くためのプロセスのことで、この役割を担うのがプロジェクト・マネジャー(PMR)です。

コンストラクションマネジメントとプロジェクトマネジメントでは、業務範囲に違いがあります。コンストラクションマネジメントの一般的なマネジメントの範囲は、設計から工事完成までです。一方プロジェクトマネジメントは、設計よりも前の段階となる企画や構想・発案の支援や、完成後の建物の長期修繕計画策定支援などの業務を含み、それらを含めて請け負う会社もあります。

ちなみに、欧米では以下のように区別している傾向があります。

  • 発注者側のマネジメント:プロジェクトマネジメント(PM)
  • 受注者側(施工者)のマネジメント:コンストラクションマネジメント(CM)

コンストラクションマネジメントのフロー

コンストラクションマネジメントでは、各段階のマネジメント業務を、発注者が委託したコンストラクション・マネジャーが担います。コンストラクション・マネジャーが担う業務は、プロジェクトの範囲や契約内容によっても異なります。一般的なコンストラクションマネジメントのフローを設計・発注・施工の各段階で見ていきましょう。

設計段階

  • 設計会社に対し工期やコストの面から必要なアドバイス
  • 設計図書を見直してコスト削減の提案

設計段階では、設計打ち合わせなどから参画し、プロジェクトの進捗管理や発注者及び設計者へ専門知識を提供しプロジェクトの成功に向けてサポートを行います。また、この段階でコストを見通せるため、コストの妥当性の判断や削減への提案も可能です。

発注段階

  • 発注区分や方式の提案、施工会社の募集・選定についてのアドバイス
  • 工事費用の算定や契約書類などの作成

設計段階で決定した仕様に対して施工会社の発注を行う発注段階は、プロジェクトの成功の重要なカギとなります。そのため、施工会社の選定やコスト管理などをサポートするコンストラクション・マネジャーの役割も重要です。

施工段階

  • 設計会社・施工会社との調整
  • 工程管理や施工図確認、コスト管理等

施工段階では、工程やコスト・品質などを発注者側の立場に立ちつつ、専門的な視点でマネジメントし、適正なコストや工程進捗を検討していきます。従来では、施工会社は設計後でなければVE(バリューエンジニアリング)提案がしにくいものですが、CM方式の場合、コンストラクション・マネジャーが設計段階から施工面・コスト面の検討支援を担います。

CM方式で設計段階からマネジメントする場合は、より効率的な新工法の採用などを取り入れ、工期の短縮やコスト削減の実現が可能になります。CM方式を採用しない場合、発注者は設計や施工におけるコスト内訳や工期・品質の妥当性などが分かりにくい点が懸念されます。

そのため、プロジェクト全体の透明性が保てず、進捗や成果に疑問や不満を感じてしまう場合も少なくありません。そういった疑問や不満を解消するために、CM方式は大変効果があります。

PM/CM方式

コンストラクションマネジメントをプロジェクトマネジメントに包括し「PM/CM方式」と呼ぶこともあります。コンストラクションマネジメント、プロジェクトマネジメントどちらも目的は、発注者のニーズの実現です。基本的には、PM/CM方式でも設計段階からのマネジメント業務が対象ですが、場合によってはそれよりも前段階の企画や構想・発案からマネジメントする場合もあります。

コンストラクション・マネジャーのマネジメント業務の内容

コンストラクション・マネジャーの主な業務を段階ごとに見ていきましょう。

設計段階

設計段階での具体的な業務内容には、次のようなことがあります。

  • 設計候補者の評価
  • 発注者への設計会社選定に関するアドバイス
  • 発注者への設計契約に関するアドバイス
  • 施工面・コスト面・スケジュール面での設計の検討支援
  • 設計VE提案
  • 設計スケジュール提案
  • 工事予算の検討

参考:CM方式活用ガイドライン(国土交通省)

発注段階

発注段階では、次のような業務があります。

  • 発注区分(工事種別)の提案
  • 発注方式の提案
  • 発注者への施工会社募集・選定に関する発注者へのアドバイス
  • 施工会社の評価、資格審査に関する発注者へのアドバイス
  • 工事費概算の算出、工事費積算の支援
  • 工事請負契約書類の確認およびアドバイス
  • 契約に関する発注者へのアドバイス

参考:CM方式活用ガイドライン(国土交通省)

施工段階

最後に、施工段階での具体的な業務内容を見てみましょう。

  • 施工会社との調整
  • 工程計画の確認
  • 工程管理
  • 施工会社が作成する施工図の確認
  • 施工会社が行う品質管理のチェック
  • 工事管理者、施工会社の評価
  • 請求書の支払い管理
  • コスト管理
  • 発注者に対する工程経過報告(工程・工事費など)
  • 施工会社からの技術的提案対応
  • 中間検査・完了検査の立合い
  • 引き渡し書類の確認
  • 報告書の作成

参考:CM方式活用ガイドライン(国土交通省)

実際のコンストラクション・マネジャーの業務範囲は、発注者の要望によって異なります。必要な業務内容は、コンストラクション・マネジャーとの契約時に具体的に定められるのが一般的です。

まとめ

発注者側に立ち、建設プロジェクトの設計・発注・施工の各段階をマネジメントするコンストラクションマネジメントは、建設プロジェクトを成功に導くために重要なものです。また、コンストラクション・マネジャーが、設計段階からマネジメント業務を担うことで、適正なコストや工期の短縮なども可能となります。

ピー・エム・ソリューションでは、一般的なCM(ピュアCM方式)の業務範囲にとどまらず、プロジェクトの川上段階である事業企画や事業計画から、川下段階の運用(長期修繕計画や事業の出口戦略等)に至るまでのあらゆる業務を提供しています。
プロジェクトの全てのフェーズをご支援させていただくことや、個々のフェーズにおける特定業務のご支援も可能ですので、お気軽にご相談ください。

PHASEⅠ 事業企画段階、PHASEⅡ 事業計画段階、PHASEⅢ 事業実施/設計段階、PHASEⅣ 事業実施/施工段階、PHASEⅤ 運用段階

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