建物維持管理とは

建物維持管理は、施設を適切な状態で長期的に使用するために大変重要です。建物維持管理を適切に行なうことにより、資産価値が維持できるだけでなく、建物の使用者の安全性や快適性の向上にもつながります。

もし、維持管理を怠っていた場合、ライフラインの寸断といったトラブルが発生したり、耐用年数に大きな影響を及ぼすなど、建物の使用者への多大な影響や、人命にかかわる重大事故につながる可能性が高まります。場合によっては、建物所有者の責任を追及される可能性もあるため、建物維持管理は非常に重要な事項といえるでしょう。

そこで、本記事では建物維持管理について分かりやすく解説していきます。本記事を読んで建物維持管理のポイントと管理業務の内容について理解し、適切な建物維持管理にお役立てください。

建物維持管理とは

建物維持管理とは、マンションやビル、工場などの建物や設備が劣化しないように定期的に点検やメンテナンスを実施し、建物の機能維持・向上を目指す業務です。
建物には、空調換気や電気、給排水、防災設備などのさまざまな設備があるため、これらが問題なく正常に利用できる状態を維持しなくてはなりません。

維持管理業務には、下記のような項目があります。

主な項目

  • 建物設備の点検
  • 劣化診断
  • メンテナンス
  • 動作監視
  • 修繕計画作成
  • 清掃

点検は大きく分けると、法律で定められている「法定点検」と、特に法律で定められてはいませんが、建物や設備を適切に維持するために重要な「日常点検」の2つがあります。法定点検とは、各種法律に定められている行政への届け出が必要な点検事項です。項目ごとに定期的に報告が必要で、例えば以下のような点検があります。

点検内容と行政への報告頻度

  • 建築設備定期検査
    • 1年に1回
  • 消防用設備等定期点検
    • 1年に2回の設備点検および所轄消防署への届け出(特定防火対象物は年1回、非特定防火対象物は3年に1回)
  • 防火設備定期点検
    • 1年に1回の届け出が必要(原則)
  • 昇降機等定期検査
    • 1年に1回の届け出が必要(原則)
  • 特殊建築物等定期調査
    • 3年に1回の届け出が必要(※毎年必要な建物もあり)

これらの法定点検の報告を怠った場合には、罰則規定が設けられているため、必ず実施しなければなりません。法定点検には「防火シャッター、スプリンクラー等の消防設備が問題なく機能するか」「避難経路が確保されているか」といった検査も行われます。

こうした法定点検において不備を指摘されないためには、定期的な日常点検や補修を行うことが重要です。日常点検においては、以下のような項目があります。

  • 設備点検(ボイラー、ポンプ、電気、空調など)
  • 水質検査
  • 建物目視

日常点検は、使用者が快適に利用できる環境を維持するために必要な業務です。日常的に点検することで修繕が必要な部分の早期発見が期待できます。また日常的に建物を点検することは、地震や火災などの災害発生時のトラブル防止にも役立ちます。
さらに、法定点検の調査・報告にあたっては、一級建築士などの有資格者や事業所登録が行われている会社でなくてはなりません。

本来、建物維持管理はオーナー自身が管理すべき事項ですが、大規模な建物などでは管理会社へ業務を委託するケースが多くなっているのが現状です。

管理会社による建物維持管理

建物オーナーがすべて実施している場合は、技術的及び専門的な知識不足による法令違反や法令の改正等に対応しきれない場合も懸念されます。そのため、管理業務を専門の管理会社へ委託するケースが多くなっているのです。では、管理会社への委託にはどのような業務が含まれるのでしょうか。ここでは、管理会社への委託について解説します。

一般的に、管理会社へ委託する業務には以下のようなものが挙げられます。

  • 修繕計画の立案・実行
  • 各種点検業務
  • 点検派生工事
  • 工事管理
  • 清掃
  • 警備

建物は、新築時から年数経過に伴い建物の躯体や設備などが劣化していきます。そのため、建物を長期間健全な状態で維持していくには、こうした躯体や設備を適切にメンテナンスする必要があります。とはいえ、無計画に設備の修繕や更新を行えばいいのではなく、建物のライフサイクルに合わせた適切な修繕計画の立案・実行が重要です。

建物のライフサイクルにおいて、修繕費・更新費といった運用段階における費用の割合が大きいため、どのように実施していくかがポイントとなります。こうした修繕費・更新費を効率的かつ効果的に圧縮するには、ライフサイクルコストを考慮した長期修繕計画の立案が大切です。管理会社へ業務委託すれば、効率的な運営につながります。

管理会社に委託するメリット

  • 日常的な点検や清掃、巡回により、軽微な補修工事や設備の劣化も発見しやすくなるため、建物の適切な維持管理が可能
  • 同じ判断基準で長期継続的に管理できる
  • 建物維持管理における、さまざまな管理記録の作成及び一元管理可能

点検のポイント

建物維持管理について解説してきましたが、管理業務を行う際には、どのような点を注意すればよいのでしょうか。建物の適切な維持管理は、使用者が快適に施設を利用できるだけでなく、地震や火災などの災害が発生した際の事故を未然に防ぐためにも重要な業務といえます。点検のポイントとしては、以下のような点に注意するとよいでしょう。

  • 避難時に障害になるような物、火災の原因になる物が階段や廊下に放置されていないか
  • 排煙窓や排煙設備が適切に作動できる状態にあるか
  • 非常用の照明装置のバッテリーや電球が切れていないか
  • 外壁や広告看板などが劣化していないか

こうした点検を怠っていたために、過去には以下のような事故が発生しています。

  • 火災発生時に放置物が妨げになり避難できなかった
  • 消防設備の不備による大規模火災が発生した
  • 防火シャッターが下の障害物によって機能せずに被害が拡大した
  • 地震によってブロック塀が倒壊し、人が下敷きになってしまった

これらの事故事例は、建物の維持管理が適切に行われていれば、被害を最小限に防げる可能性が高いものばかりです。ずさんな建物の維持管理により事故が発生すると、場合によっては所有者が法的な責任を追求される事例もあります。これらを防ぐためにも適切な管理を行うと同時に、修繕履歴や記録を残しておくとよいでしょう。

さらに、建物のライフサイクルを理解したうえで、日常的な施設管理の実施や、しっかりとした長期修繕計画を立案・実行することが重要です。建物のライフサイクルと、ライフサイクルコストを踏まえた効率的な施設運営・管理を行い、建物の資産価値の維持・向上につなげていきましょう。

また、適切に維持管理されている建物は入居者から選ばれやすく、結果的に高い入居率が維持され、収益面にも大きく寄与する可能性が高くなります。

まとめ

本記事では、建物維持管理についてお伝えしてきました。建物の維持管理は、施設を適切な状態で長期的に使用するために重要な業務といえます。建物の維持管理が適切に行われれば、建物の資産価値の維持はもちろんのこと、使用者の安全性や快適性が向上し、結果として資産価値向上にもつながります。

一方で、日常管理を怠った結果、重大な事故や災害につながる危険性もあります。そのため、建物のライフサイクルを理解したうえで長期的な目線で建物を維持管理していくことが重要です。

ピー・エム・ソリューションでは、オーナー様の建物の維持管理についてのお手伝いをさせていただいております。建物に関する日常のさまざまなお困りごとについて解決策のご提案をいたします。お気軽にご相談ください。

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