プロジェクトマネジメントとは
あるプロジェクトを進めるときに「どう進めればいいのか分からない」「今どんな状況か見通しが立たない」「どのくらいの時間とコストを要するのかわからない」など悩み事は尽きないかと思いますが、そのプロジェクトを効率よく遂行するために重要な管理手法が「プロジェクトマネジメント」です。
プロジェクトを成功させるには、プロジェクトマネジメントの意味や役割を理解しておかなければなりません。本記事では、プロジェクトマネジメントの意味やコンストラクションマネジメントとの違い、フローなどをわかりやすく解説します。
概要
プロジェクトマネジメントの歴史は19世紀後半にさかのぼります。定義や概念を確立したのは冷戦期のアメリカと言われています。プロジェクトのプロセスを体系化した「Program Evaluation and Review Technique (PERT)」は、アメリカ国防省の軍事プロジェクト効率化のために開発されました。
その後、さまざまなプロジェクトマネジメントが開発されています。現在は、アメリカの非営利団体PMIがプロジェクト管理に必要な知識をまとめた「A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK®)」が、世界中で広まっています。日本でも経済産業省のバックアップを受けて、プロジェクトマネジメントの標準化が推進されています。
現在はプロジェクトマネジメントに関する資格も多くあり、プロジェクトマネジメントは広く普及したといえます。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメント(PM)とは、プロジェクトを滞りなく進めるための管理手法を言います。詳しく見ていきましょう。
プロジェクトとは
プロジェクトマネジメントの国際標準ともいえるPMBOK®では、プロジェクトを「独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務」と定義していますが、分かりやすく言うと「プロジェクトを滞りなく進めるための管理手法」であることは、先にご説明した通りです。
プロジェクトの特徴は大きく次の2つ。
- 終わりの期限が決められている「有期性」
- 未経験の要素や他にはない要素が含まれる「独自性」
プロジェクトは同じことを繰り返すルーティンワークとは異なり、「顧客や発注者の要望に合わせたものを期限内に完成させること」といえます。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトには完成までの期限があり、その期限までに効率的に業務を遂行することが求められています。プロジェクトマネジメントはプロジェクトを成功に導くためには不可欠です。
- いつまでに何をするのか?
- どの程度すすめるのか?
- どのクオリティで仕上げるのか?
- 人員や予算は?
プロジェクトは達成までの道のりを考えることが必要です。完了時を想定して、プロセスの構築、品質やコスト・納期を守るための体制を整えることが重要です。こうした総合的な取組みを「プロジェクトマネジメント」と呼びます。また、プロジェクトマネジメントを推進する人のことを「プロジェクト・マネジャー」と呼びます。
コンストラクションマネジメントとの違い
プロジェクトマネジメントと同様な手法に、「コンストラクションマネジメント(CM)」というものがあります。コンストラクションマネジメントとは、建設業界で取り入れられている業務管理手法のこと。
発注者から依頼を受けた建築の技術や知識をもつ経験者(コンストラクション・マネジャー)により、設計・発注・施工の各段階を推進していきます。
コンストラクション・マネジャーは、発注者側の視点を持って、設計・発注・施工の各段階で、設計や発注方法の検討やコスト管理・進捗管理などの各種マネジメント業務を行います。プロジェクトマネジメント同様に業務を遂行するための管理手法ですが、それぞれが対象とする業務の範囲が異なる点が大きな違いです。
コンストラクションマネジメントの業務領域
コンストラクションマネジメントの業務領域は、以下のようになります。
- 設計段階
- 発注・契約段階
- 施工段階
コンストラクションマネジメントでは、設計段階から工事施工までが業務範囲となるのが一般的です。
プロジェクトマネジメントの業務領域
プロジェクトマネジメントは、基本計画よりもさらに前の段階の事業構想から完成後までが業務対象です。
更にプロジェクトを幾つか束ねたプログラム・マネジメント、プログラムを束ねたポートフォリオ・マネジメントという上位の概念もあります。弊社はプロジェクトマネジメントのみではなく、これら上位の視点に立ったマネジメントも支援しています。
一般的に建設プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの業務領域は以下のようになります。
- 企画段階
- 設計段階
- 発注・契約段階
- 施工段階
- 維持管理・運営段階
プロジェクトマネジメントのフロー
プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの計画立案やスケジュール作成・進捗管理からコストやリスク管理などを推進します。
プロジェクトマネジメントの流れを理解するには、まずはプロジェクトの構成を理解しましょう。
プロジェクトは、複数の「フェーズ」で構成されています。
フェーズ
フェーズとは段階や局面という意味を持ち、プロジェクトを作業内容や期間・規模などによって区切った「工程」です。
プロジェクトの大小によっても異なりますが、基本的にプロジェクトではやるべき作業が多くあります。もしプロジェクトをフェーズ分けしていなければ、「いつどの作業が行われたのか」「進捗がどうなっているのか」把握できず、プロジェクト管理が煩雑になってしまうでしょう。プロジェクトをいくつかのフェーズに分けて、フェーズごとに目標を定めることで管理がしやすくなります。
プロジェクトマネジメントの流れ
フェーズは、基本的に立ち上げ・計画・実行・監視コントロール・終結の順に流れていきます。プロジェクトマネジメントも、この流れに沿って管理が行われます。
フェーズには以下の二つの基本的なタイプがあります。
直列関係
直前のフェーズが完了しないと次のフェーズが開始できない場合のプロジェクトです。
確実に直前のフェーズが終わってから次フェーズに移行するので、手直しなどのリスクは減りますが、スケジュールを短縮することはできません。以下の図は廃棄物処分場の再生プロジェクトの例です。
重複関係
スケジュール短縮法の一つとして、先行フェーズ完了前に後続フェーズを平行して作業進める手法(ファスト・トラッキング)がありますが、先行フェーズから正確な情報を得る前に後続フェーズへ進むため、手直しが発生したり、並行作業のための人材確保が必要になったり、スケジュールは短縮できるがリスク増加となる場合があります。以下の図は設計フェーズと建設フェーズの例です。
フェーズを構成する5つの構成群
PMBOK®におけるプロジェクトマネジメントでは49個のプロセスを定義し、それらを5つのプロセス群に分類しています。
各フェーズは次の5つのプロセス群で構成されているのが特徴です。
- 立ち上げプロセス群
目的や予算など、プロジェクトのスタート段階を設定する各プロセスです。プロジェクト憲章の作成などを通じて、新しいフェーズの定義のために実行されるのが立ち上げプロセス群となります。 - 計画プロセス群
プロジェクト達成に必要な具体的な計画を立てるのが計画プロセス群です。計画プロセス群では、役割や必要なメンバー・タスクの洗い出し・計画書の作成など、プロジェクト達成に必要な行動を提起していきます。 - 実行プロセス群
計画プロセス群で立案した計画をもとに、実行していくのが実行プロセス群です。 - 監視・コントロール・プロセス群
「実行状況が計画と乖離していないか」確認していくのが、監視・コントロール・プロセス群です。このプロセス群では、必要であれば修正作業も行われます。 - 終結プロセス群
終結プロセス群は、フェーズの最終確認など終結のためのプロセス群です。
プロセス群の具体的な活動内容を見ていきましょう。
例えば、新築工事における設計フェーズでは
立ち上げプロセス群
- 社内でプロジェクトとしての承認を取るための書類(稟議書など)の作成
- プロジェクトに関わる関係者(所有者・使用者・従業員・建設会社・行政当局)の整理、リスト化
計画プロセス群
- 実行計画書の作成(スケジュールの作成、予算の設定)
- 関係者の役割の整理
- リスクの洗い出し
実行プロセス群
- 見積要項書の作成
- 見積書の精査・価格交渉
- 発注先の選定・契約締結
監視・コントロール・プロセス群
- 計画及び実行プロセスにおける進捗状況の把握と差異の分析
- スケジュール管理
- コスト増減の管理
- 要求されている品質が実現されているかの確認
終結プロセス群
- 成果物(図面、仕様書等)の確認
プロジェクト・マネジャーに求められる要素
プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトを正しい方向に導くための大きな役割を担っています。プロジェクトに関わるすべてを把握し、作業に関する知識や技術・コミュニケーション能力など、さまざまなスキルをバランスよく持っている必要があります。
以下の2点は最も重要な要素となります。
- 客観視できる視野
- コンフリクトの解消
客観視できる視野
プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトを常に客観視し、目標を意識する必要があります。プロジェクト中は、関係者の状態や進捗状況など、さまざまなことを把握することが求められるものです。しかし時間に限りのあるプロジェクトでは、日々の業務に追われてしまい目の前のことに捉われてしまう場面もあるでしょう。
またプロジェクトを常に意識していると、主観的になってしまうことも少なくありません。目先のことに捉われすぎてしまい主観的に判断してしまうと、プロジェクトを正しい方向に導けなくなってしまいます。プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトの状態を事実に基づいて客観的に判断し、適切な判断ができることが重要です。
コンフリクトの解消
プロジェクト・マネジャーは、数多くの意見の中から一つの正解を導き出さなければなりません。プロジェクトを遂行する中では、関係者からさまざまな意見が出てくることは珍しいことではありません。時には意見が割れてしまい関係者同士が反発することもあるでしょう。(コンフリクトの発生)
関係者の意見を肯定して信頼関係を築くことは大切ですが、プロジェクト・マネジャーが支援役の立場になろうとするあまり、意見をまとめられないケースもあります。これを避けるには、各関係者にそれぞれの意見があることを踏まえたうえで、プロジェクトの状況や目標をもとに、いくつもある意見の中から一つの正解を見つけ、関係者と調整してプロジェクトを進めることが必要です。プロジェクト・マネジャーのコンフリクト解消能力がプロジェクトチームにとって非常に重要です。
ただし、あくまで客観的に判断したうえでの正解であり、自分自身の意見を押し通すような対応は避けるようにしましょう。
まとめ
プロジェクトマネジメントの基本やフローについて解説しました。プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを効率的に遂行するための管理手法です。
ピー・エム・ソリューションのプロジェクトマネジメントは、市場の動きやトレンドをつかみ、プロジェクト全体を見渡した戦略と具体的な戦術で、事業計画の企画から「課題整理」・「計画決定」・「工事」・「建物維持管理」までのあらゆる段階をサポートします。
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